about?

・更新未定です
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「ねぇ、やっぱり今日はこっちに戻ってこれないの?」
 暗く、広い室内に私の声は冷たく鳴り響いた。ここには私しかいない。そう思うと虚しかった。目は充血しいるだろう。それでも涙は流さない。

「今週は戻ってこれるって言ったじゃない! どうして?」
 答えのわかってる質問が口をつく。受話器からは、彼の声が聞こえる。でも聞きたくない。そんな言葉聞いてもなんの慰めにもならない。言葉なんていらない、ただそばにいてくれさえすれば私は満足なのに。

彼と出会ったのは、四年前。付き合い始めたのはその三ヶ月後だった。あのころが懐かしい。あのころに戻りたい。いつでも会いたいときに会うことが出来た。でも、一昨年、彼は遠くに行った。仕事の都合だから仕方なかった。私も着いて行くか悩んだ。でもそれは叶う願い。そのまま付き合いは続いてる。でも、こんなに苦しいなら、あのときに分かれていたらよかった。

いや、いまがそときなのかな。
「来週じゃダメ、今日じゃなきゃダメなの! 今日が何の日かわかってるの?」

 これが最後のテスト。これがわからないなら、私も覚悟を決める。今日という特別な日に一緒にいられない。それだけでもこんなに辛いのに。もし、特別だと思ってたのが私だけなら、きっと彼と私は同じ道を歩むのはもう無理。
『え? えーと、ちょっと待ってよ』

 受話器越しの彼の声は私の期待を裏切って、いや最悪な期待どおりに歯切れがわるかった。もういい。もう半年以上も会ってないし、ここがきっと引き際なんだ。そうに違いない。
「もういいわ。もう私たち……私たち……」

 なんでだろう言葉が出てこない。その代わりに目からなにかが流れてる。どうして。あの言葉をいうだけなのに。いつかこの日が来るってわかってた。なのにどうして言葉が出ないの。口が思ったように動かない。

時間はどんどん流れていく。私の嗚咽だけが、私と彼をつなぐ電話線の間を流れる。なにかしゃべらなくちゃ。あの言葉を言わなくちゃ。

ピンポーン。まぬけなチャイムの音が、きまずい時間を切り裂いた。

こんなときに来客なんて。居留守してもいいよね。そう思ってると、

『大丈夫か? 来客みたいだな。また後でかけ直すから、ちょっと頭を冷やせ。でも無理はするなよ』

 受話器越しに彼の声が聞こえた。

「え? ちょっ」
 こっちの気も知らないで電話は切れた。もうなんでよ。


 十分時間が立ってから外の空気に当たるために家から出たら、ポストには不在表が入っていた。どうやら配達業者の人が来たようだった。夕方に来てもらうことにした。


日が暮れてきた。もう大丈夫。頭は冷えたし呼吸も落ち着いた。今度こそ、彼にあの言葉を言ってやる。そう思って電話をもった。でも、手は震えている。私なら言える、あんな薄情な男なんてもう知らない。私なら言えるわ。そう自分を鼓舞し、受話器をとった。

 一コール、二コール、コール音が鳴り響く。なんで出ないのよ。さっさと出なさいよ。鼓動はどんどん加速していく。また、目頭が熱くなってきた。
ピンポーン。またチャイムの音が鳴った。私が呼んだ配達業者の人だった。忘れてた。幸いまだ通じてないし、一呼吸おくために受け取りにいくことにした。

「はい、ここに印鑑おねがいします」

 私は促されるままに素直に印を押した。小包だった。差出人には見慣れた彼の名前が……。いったい何なの。今日会うことが出来なくなったからってプレゼントでごまかそうって魂胆だったのだろうか。そうに違いないわ。私はそんなので騙されない。

一応、開けた小包の中に、箱と一通の手紙が入っていた。手紙の表には、

『僕と君の出会った今日に感謝して』
 と、書かれていた。

「なんだ、覚えてたんだ……。どうして」
 ちょうど、着信音が鳴り響く。きっと彼からだろう。うん、もう少し話し合ってみよう。






執筆日:2010-10-16
公開日:2010-11-20
加筆修正日:2010-11-20
執筆者:元伊六
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