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	<title>ssn&#039;s Novel</title>
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	<description>駄文置き場　これから週１で更新予定</description>
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		<title>ssn-21 happy birthday to......</title>

		<description>　とあるオフィス街。すでに定時は過ぎて…</description>
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			<![CDATA[ 　とあるオフィス街。すでに定時は過ぎていたが、灯りの漏れる窓がいくつかあった。この街が闇に落ちるにはまだ少し早い。
　それでも既に闇に包まれた部屋の方が多かった。そんな闇色の窓を眺める女性が１人いた。

「はぁっ」
　と、ため息ひとつ。彼女自身はまだ灯りの付いた部屋の中にいた。いわゆるサービス残業というものだ。窓の向こう、正面のビルのとある部屋の窓に目を向けても、すでにそこに灯りはない。生命が感じられなかった。つい、半刻前まで在った存在感は消えていた。

「あたしも早く帰りたいなぁ」
　部屋には女性１人しかいなかった。薄情者とすでに帰った先輩や同僚に毒付いても、聞いてくれる人すらいない。机の上の携帯もただの置物状態だった。

「今日は早く帰りたかったのに。思い返せば毎年こんなのばっかり」
　女性にとっては、いわゆる記念日だった。おそらく一生で一番多く巡ってくる記念日。これで何度目か数えるのをやめて数年経つ彼女でも、やっぱりこの日は特別な日だった。誰かと一緒に過ごしたいと思うくらいには。

　もともとは予定があった。が、それは女性が自らキャンセルした。いつ終わるかわからない残業のせいだった。いつまでも待たすわけにはいかない。『残業することになったから、今日は無理。ごめんね』とメールを送ったのは、もう数時間前。

　ふと、彼女は窓の外に目をやった。が、灯りの数はさっきより減っていた。
「やっぱ、あいつはもう帰ったよね。メールくらいくれればいいのに」

　女性は携帯に視線を落とす。受信ボックスの一番上にある『同じく。タイミングが合えば一緒に帰ろう』と書かれたメールを見ていた。受信したのは数時間前。
「ばかっ」
　と漏れた言葉は、目から液体が溢れないようにするためか。

　女性は時計を見る。日付が変わるまでそんなに時間は残ってなかった。仕事はまだまだ残っていた。キーボードを叩く手に覇気はない。『今年もまたいいことのない一日だったな』と、打ち込んでいた。

　女性はあわててそれを消した。と、そのとき携帯が音と光を発しながら震えだした。

「ふぇっ！」
　女性は小さな悲鳴をあげた。受信者は、さっきから何度も名前を見ている相手だった。さっきまで受信ボックスの一番上にあった名前と同じ。
　
　メールには『窓の外を見て！』と、だけ書かれていた。
　さっきから何度も見てるんだけど、と苦笑しながら女性は窓の外に視線を移す。
　
　苦笑は消えた。息を飲む音がした。女性の頬には液体が伝う。
　隣のビルの窓から灯りが漏れていた。さっきまで見ていた部屋だけじゃなく、いくつもの部屋の明かりがついていた。まるで文字を描くように。
　
『Happy birthday to ......』


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執筆日：2011-09-19
公開日：2011-09-19
執筆者：黒井遊離
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		<dc:date>2011-09-19T12:06:07+09:00</dc:date>
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		<title>お詫びと近況（9/13）</title>

		<description>長期にわたり放置して申し訳ございません…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 長期にわたり放置して申し訳ございません。
しかし、近い将来更新再開するメドも立っていません。もうしばらく放置します。
本当に申し訳ございません。

近況として、一点だけ重要なことお伝えします。
当サイトの管理者であり、当サイトで扱っている小説の著者である僕の名前が変わりました。
以前は、『元伊六』でしたが、8月15以降、『黒井遊離』となりました。
当然ですが、元伊六名義の作品も著作権は黒井遊離にあります。

ということで、次回の更新は未定ですが、キリンより首を長くしてお待ちいただけると幸いです。 ]]>
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		<dc:date>2011-09-13T15:45:15+09:00</dc:date>
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		<title>ssn-m 桜　－回億ー</title>

		<description>　遠い昔の約束だった。
『十年後、桜の…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 　遠い昔の約束だった。
『十年後、桜の季節になったらこの木の下で会おう』
　いつ交わした約束か。誰と交わした約束か。どこで交わした約束か。記憶は曖昧である。すでに約束のときは過ぎたのかも知れない。哀しい空の色だった。それだけは覚えている。

　
　最近、幼少時代を過ごした町に戻ってきた。靄がかかったように当時のことを思い出せない。この町に戻ってきたのはたまたまだった。愛着があるわけではない。ここで過ごしたことも親に言われるまで忘れていた。
　せっかくなので、散歩している。とても自然が豊かだ。桜並木は満開の花で彩られていた。　桜がひらひらと舞う。
　桜の匂いが鼻腔をかすめた。約束が脳裏をよぎる。匂いが感覚を刺激し、記憶を引き出す。あの約束をした場所もこんな匂いがしていた。とても懐かしく、そして切ない。
　どうして切ないのだろう。落ち行く花びらを見てると胸が苦しくなった。あの日もそうだった。涙を我慢して話す彼女の目を見れなかった。視線をそらして、地に落ちる桜を眺めていた。

　彼女？　あの約束を交わしたのは女性だったのか。たしかに女性、いや女の子だった。当時の僕より、ほんの少しだけ背が高かった。長く忘れていた少女の顔。どうして忘れていたのだろう。当時僕はあんなにも･･････。

　いままで靄がかかったように思い出せなかった記憶が蘇ってくる。約束の場所はどこだろう？　約束したのはいつだろう？　彼女は覚えているのだろうか。
　周囲を見てもこの並木道には、あの桜の木は見当たらない。とても大きくて圧倒的な存在感を持っていたあの木はここにはない。

　意識より先に体が駆け出した。通り過ぎる風景を見て思う、この光景は知っている。あの頃と少し違うけど、たしかにあの約束を交わした町だ。このまま走れば約束の場所にいける、不思議とそう確信できた。
　でも行ってどうするのだ。あの約束を交わしたのはいつだ。もう、十年経過したのだろうか。それともまだ八年くらいしか経っていないのだろうか。

　あの場所に行って、彼女は来てくれるのか。それがとても心配になってきた。

　頬に触れる風が冷たかった。幼い約束を信じて走る自分が滑稽に思えた。それでも、足は止まらない。
　記憶を頼りにひた走った。当時、彼女と僕の秘密基地のあった裏山のはずだ。懐かしい光景が視界を通り過ぎていく。その光景がさらに記憶を呼び起こす

　彼女の名前、遊んだ場所、遊びの内容、いろんなことが浮かんでくる。そして、彼女への淡い想いも･･････。　

　何分走っただろうか。ついに約束の桜の木が見えた。
　当時と変わらず圧倒的な存在感を誇っていた。夕日に映えるその姿は当時と変わりなかった。紅色の花びらは、たしかにあの日見たものと同じだった。そして、人影は･･････。
　一陣の風が吹いた。強い桜の匂いが吹き抜ける。紅色の花びらが舞い散る。視界全体を花びらが覆う。あの日もこんな風が吹いた。懐かしさや哀しさ、いろんなものがこみ上げてくる。
　花びらと目から溢れる気持ちで前が一瞬、見えなくなった。
　
　一瞬のち、そこには女性がひとり立っていた。空は綺麗な色をしていた。

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執筆日：2011-02-24
公開日：2011-04-3
加筆修正日：2011-02-24
執筆者：元伊六 ]]>
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		<title>ssn-20　闇討ち</title>

		<description>　コツコツと響く渇いた足音はひとつ。薄…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 　コツコツと響く渇いた足音はひとつ。薄暗く人気のない地下駐車場を歩くのは一人の男性。ここにはあることを調べるために来た。現在も使われてる駐車場であったが、時間が悪いのか彼以外に動くものはひとつもない。数台止まってる車も当然無人で、薄気味悪い雰囲気を醸し出していた。

　男はゆっくりとした足取りで歩く。まるでなにかを探しているようだ。ふと、顔上げた男がなにかに気がついた。目の前の車の陰になにかを見つけたようだった。車は柱の影になっていて、見え辛い。男は車まで近づいて行きしゃがみこんだ。ポケットから取り出した携帯電話で地面を照らす。

　男が地面に手を伸ばした、そのとき、ヒュッという風を切る音が聞こえた。

　もっとも男の耳にその音が聞こえたときには、さらに大きな衝突音が鳴り響いていたが。その衝撃音は男の頭と鉄パイプが衝突する音だった。ぐらっと顔面から地面に倒れこむ男。襲撃者は容赦することなく、さらに後頭部へと鉄パイプを振り下ろした。

  
　次の衝突音は男の耳の横で鳴り響いた。襲撃者の手元が狂ったのではない。男がぎりぎりで身をよじったため、ほんの少しだけだけ鉄パイプと距離が出来たのだった。鉄の臭いが地下に充満していた。男の後頭部を真っ赤に染める液体の臭いだった。それは、徐々に広がり無機質な灰色をした地面を紅く染めていく。

　地面を打った衝撃から襲撃者からの攻撃は一瞬途絶えた。その隙に男は寝返りを打って仰向けになる。手に持った携帯電話で襲撃者を照らした。襲撃者は老人だった。歳の割りに背筋はまっすぐだったが、顔にはしわが多く髪は真っ白だった。その顔を確認し、男は驚いた。相手がお年寄りだったからではない。なぜあなたが。そういう驚きだった。

　驚いた瞬間を老人は見逃さなかった。鉄パイプを男の頭部に振り下ろす。男の腕に防がれた。鈍い音が響き渡る。
　

　男の口からは苦悶の声と血が漏れた。腕は腫れていた。
　

　老人が再度、鉄パイプを振り上げた。先の一撃で男の腕には力が入らない。もう一発防ぐことは出来そうにない。逃げようともがくが、最初の一撃のダメージからか、足が思うように動かないようだった。

　老人がなにかをつぶやいた。その顔は狂気に彩られていた。そして、すばやく必殺の一撃を振り落とした。その軌道は確実に男の頭蓋骨を捉えていた。動けない男に避ける術はなかった。残忍なるその一撃が、まさに男の頭部を破壊しようとするその瞬間。
  

「はい、カットォ」
　野太い男性の声が響き渡った。

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執筆日：2011-03-19
公開日：2011-03-20
加筆修正日：2011-03-20
執筆者：元伊六 ]]>
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		<title>ssn-19　待ち合わせ</title>

		<description>『ミニスカに黒ストッキングで行きます』…</description>
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			<![CDATA[ 『ミニスカに黒ストッキングで行きます』

　携帯電話の画面にはそう書かれていた。携帯電話の持ち主の男はそれを見て、鼻の下が伸びていた。
　メールの送り主は、オンラインゲームで知り合った女の子。男が彼女と会うのは今回が初めてだった。いわゆるオフ会というもので、主催者は彼女であった。他にも数人来るらしい。出来れば一対一で会いたかったというのが男の正直な気持ちだった。

　メールには今日の彼女の服装がこと細かに書かれていた。上はグレーのパーカーを羽織ってるらしい。待ち合わせ場所と時間は、何度も確認していた。
　男のテンションは絶頂だった。顔も声も知らない相手である。期待しすぎるのは良くないのは理解していた。それでもワクワクするのは男性の性なのか。もっとも、男はもともと顔に拘るタイ
プではなかったが。

　男がここまで浮かれているのには理由がある。ゲーム内のチャットやゲームをしてないときの個人的なチャットやメールで異常に気があったためである。好きな映画、小説、食べ物、趣味などどんな話題でも話が合った。同じ趣味の異性がいるのは嬉しいことであった。

　電車を乗り継ぎ、待ち合わせの駅を目指す。時間には余裕がある。

　男は電車の中でもずっと彼女のことを考えていた。ほかに来る人にはまったく興味がなかった。どんな女の子なのか、それを想像してるだけで、着実に目的の駅へと近づいていく。

　男は電車のなかで終始にやにやとしていた。まわりの乗客に気味悪がられてることにも気づかないほど自分の世界に入り込んでいた。

　今回、彼女がミニスカートと黒ストッキングで来るのは男のためだった。男がミニスカートと黒ストッキングが好きだと以前チャットで言っていたのを彼女が覚えていたのだ。普段はミニスカートを履かないらしいが、今日は特別らしい。自分のためにわざわざ滅多に履かないミニスカートを履いてくれてると思うと男は、嬉しくてたまらなかった。
　男は、今日もっと仲良くなって今度は二人きりの遊びに誘うという野望を抱いていた。どこに誘うか、と妄想はそこまで進んでいた。

　妄想を続けているうちに、いつの間にか目的の駅に着いた。あまりに自分の世界に没頭しすぎていたため、もう少しで乗り過ごすところだった。
　そうして、なんとか遅刻することなく待ち合わせ場所についた。あまり人のいない、それでいて特徴的な場所だった。まず間違えることはない。そんな場所だった。しかし、そこには女性の姿はなかった。男性が四人いた。

　男は一瞬自分の目を疑った。その男性の中のひとりの服装に目を奪われた。
　
　グレーのパーカーにミニスカ、そして黒ストッキングを履いていた。頭はてっぺんが剥げていた。なんど見ても黒いストッキングを履いていた。
　


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執筆日：2011-02-27
公開日：2011-03-12
加筆修正日：2011-03-12
執筆者：元伊六 ]]>
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		<dc:date>2011-03-12T22:37:31+09:00</dc:date>
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		<title>ssn-18　浮気</title>

		<description>「あんたから呼び出すなんて珍しいじゃな…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 「あんたから呼び出すなんて珍しいじゃない？どうしたの？」

　専門学校時代からの親友に呼び出され、彼女の家に来た。今は向かい合って座っている。
　彼女は酷くやつれいていて、眼は真っ赤に腫れていた。化粧で隠そうとしてるようだったが、隠せていなかった。

「やっぱりわかる？」
　彼女は思いの外、明るい口調でそういった。でも、声は震えている。

「うん、まるわかり。……彼氏となんかあったの？」
　私から切り出すか迷ったが、喋りやすいように話を振る。彼女がこういう表情をするときは、大抵は男関係だ。私の経験がそう言っている。

「ほんと、なんでもお見通しね」
　そういって、くすっと彼女は笑う。私は笑えない。

「あいつ、浮気してたのよ」
　非常に冷たい声で彼女はそういった。眼には暗い光が宿っている。これはやばい状態だと、私の経験が警鐘を鳴らしている。

「ほんとに？　あの人、全然そういうことしそうな人に見えなかったよ」
　友達の彼氏はどちらかというと誠実そうな男性だった。全然浮気とは無縁そうだった。少し意外である。

「女を家に上げてたの」
　凍てつく声で言う。どんどん彼女の声は冷えていく。警察沙汰は勘弁して欲しいなぁ。

「それだけで浮気って限らないじゃん、なんか事情があったのかも知れないし。ちゃんと彼に話聞いた？」
　苦し紛れにそう言ってみる。うん、完全に苦し紛れである。彼女の表情を見れば、家に上げていただけだなんて思えない。確実にそれ以上を目撃したのだろう。

「一緒に寝てたのよ！　あんな男に話聞く必要なんてないわっ！」
　彼女は声を荒げた。どうやらスイッチを踏んでしまったようだ。逆効果だった。このままだと、ほんとに事件を起こしかねない。

「あんな女、ぎったんぎったんにめった刺しにして、ばらばらにして、燃やしてやる。私の彼を奪うとか絶対に許さない」
　そう言って、不敵な笑みを浮かべた。これは本気である。以前も事件になりかけたことがある。今回は本当に事件になるかもしれない。と人事のように考える。

「うーん、相手はどんな子なの？」
　少しでも話題の方向をずらしたかったのもあるが、単純な興味としてそう聞いてみた。あの真面目そうな彼を篭絡するなんてどんな女性なんだろう。

「あの小娘？　ちょっと待ってて見せてあげるわ」
　そういって、彼女は部屋を出て行った。写真でも取ったのかな。しかし、どうやっていつ。と疑問がよぎる。
　しばらくして、戻ってきた彼女はノートパソコンを持っていた。
　
「ほら、この小娘よ」
　画面に映っているのは、等身大の人形を扱うメーカーのサイトであった。

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執筆日：2011-02-24
公開日：2011-03-05
加筆修正日：2011-03-05
執筆者：元伊六 ]]>
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		<title>ssn-17　魔法使いと小さな村</title>

		<description>　とある王国のとある小さな村。小さすぎ…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 　とある王国のとある小さな村。小さすぎて、王国内にも存在を知る人の少ない、そんな村であった。訪れる旅人も行商人もほとんどいないこの村は、当然のように自給自足していた。小さな畑で野菜を作り、近くの森で動物を狩り、近くの川で水と魚をとって、長閑に人々は暮らしていた。

　暖かい風が吹きはじめたある日のこと、その小さな村に一人の男がやってた。黒いローブに身を包んでいた。男は自らを魔法使いだといった。

　村人は困惑した。奇妙なものを見る眼で男性を見る。

「魔法使いとはなんじゃ？」
　村の長と呼ばれる老人が男に聞いた。男は少し戸惑い、それから丁寧に答えた。

「魔法を使うのを仕事としております」
「その魔法というのは一体なんじゃ？動物の名前か？」
　以前、老人がまだ幼かった頃村に訪れた旅芸人のサル使いのことを思い出して言った。はて、それらしいものも見えんなぁ。と、続けた。

「魔法を知らないのですか？」
　男は目を丸くした。いまだにこの国に魔法を知らないものがいるとは。と、心の中で呟いた。
　世間から隔絶されたこの村には、生活に必要のないことを知ってるものなどいなかった。世間の噂や流行りとは無縁だった。

「魔法とは、非常に便利で使えれば幸せになるものです」
　男はそう説明した。試しにと言って、男は手のひらの上に火の玉を作った。村人は歓声をあげた。

　村人がざわめく中、老人は冷静に言った。
「しかし、それは熱そうじゃな。焼けどしたら大変じゃぞ」


　こんなことも出来る。そう言って男は宙に浮かんだ。足が地面に付かないまま移動した。村人は一段と大きな声を上げた。

「それで、その魔法使いさまがなんのようじゃ？」
　老人だけは落ち着いていた。

「今回は特別に皆様に魔法を教えるために訪れました。こんな僻地だと不便なことも多いでしょう」
　男性は得意げに言う。

「ふむ、それで魔法が使えたらどうなるのじゃ？」
「いろんなことが出来ます。生活が楽になります。それに幸せになれますよ」

「結構じゃ、わしらには不要じゃ」
　きっぱりと断った老人に男性は困惑した。村人も不思議そうな顔をしていた。

　老人は言う。
「わしらは皆幸せじゃ。豊かに自然に囲まれ、食べるものにも困っておらん。村民はみんな仲がよい。子どもも元気に育っておる。なにも困ってはおらん」

　老人の言葉に、村人は頷いた。たしかにその通りだ。と口々に言っている。
「火は石と蒔きで起こせばよい。空なんぞ飛べる必要はない」
　さらに老人は続ける。
　

「そんな便利なものがなければ幸せになれないおぬしのほうが、不幸じゃぞ」


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執筆日：2011-02-22
公開日：2011-02-27
加筆修正日：2011-02-27
執筆者：元伊六 ]]>
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		<title>ssn-16　授業参観</title>

		<description>　授業参観、それは親が我が子の頑張りを…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 　授業参観、それは親が我が子の頑張りを見るために学校に行く日である。頭のいいこの親は胸を張れる。やんちゃな子の親は子どもの粗相をしないか心配である。子どもの成長した姿を楽しみにした親がやってくる。

　いわゆるベッドタウンにあるその学校は、少子化が騒がれているにも関わらずたくさんの子どもが通っていた。当然、授業参観にやってくる親もたくさんいる。その多くは母親であった。

　そんな中、一人の初老の男性が廊下を歩いていた。スーツを見事に着こなしていた。一見すると、ベテラン教師に見える。すれ違う母親達も教師と思い会釈をして通り過ぎていく。が、男性は一度も教鞭を握ったことがない。つい先日まで一介のサラリーマンとして身を削って働いていた。

　サービス残業は当たり前であった。有休はほとんど使わなかった。土曜出勤も当然のことだった。そんな男性は、一度も息子の学校行事に参加したことがなかった。授業参観はもちろん、運動会も音楽会も入学式も卒業式も一度も見に行ったことはなかった。

　そんな男性に小さい息子は何度も、一度は身に来てくれと頼んできた。その度に口約束をして、破って怒られていた。起こってる姿がまたかわいかった。そんなことを考えながら男性は廊下を歩く。

　この年になって、会社を自主退職した。蓄えは十分あったし、以前からの夢であった居酒屋を開いた。夕方からは忙しいが、昼間は以前より明らかに自由になった。やっと息子の学校行事を見に行くことが出来るようになった。男性はそのことを喜んだ。

　しかし、息子に授業参観を見に行くと話したら、来ないでくれと言われた。そのことが悲しい反面、嬉しかった。もうそんな年頃なのか、大きくなったなぁと、感心した。

　今日はこっそりと来ていた。だから息子の教室の場所がわからなかった。すれ違う婦人に息子の教室の場所を尋ねたりした。一見すると教師に見えるため、不思議に思われた。しかし、場所は聞き出せた。

　息子の教室が近づいていた。男性は足が速くなる。もう少しで息子の姿が見える。息子はちゃんとできてるのだろうか。はやく息子の姿が見たい。年柄にもなく男性は期待に胸を膨らませて廊下を歩いた。

　男性は学校が嫌いだったが、その息子は学校が好きらしかった。母親の育て方が良かったのだろう。男性は妻に感謝していた。学校に行くことを毎日楽しんでるようであった。
「では、この問題がわかる人は挙手して」

　廊下の奥、息子の教室から声が聞こえてきた。しっかりとした自信に満ちた男の声だった。その声を聞いて男性の眼わずかに湿った。

　その声は紛れもなく、息子の声だった。今年で二十八歳になる息子のものだった。


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執筆日：2011-02-18
公開日：2011-02-19
加筆修正日：2011-02-21
執筆者：元伊六 ]]>
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		<title>ssn-15　バレンタイン</title>

		<description>　街を甘い匂いが包んでいた。年に一度、…</description>
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			<![CDATA[ 　街を甘い匂いが包んでいた。年に一度、主に女性が男性にチョコレートを送る日が今年もやってきた。最近は、同性間での交換や、男性から女性へプレゼントということも増えてきてるが。

　しかし、万人がいい思いを出来る日ではないのもまた事実である。意中の男性に受け取り拒否される女性もいれば、義理チョコすら一つも貰えない男性もいる。

　小さな街に住む少年もそんな1人だった。物心がついてからこの日にチョコを貰ったことは一度もなかった。本命はもちろん、義理すらも。父子家庭で一人っ子の少年は、最後の砦である身内からのチョコすらもらったことがなかった。彼にとって、この日は一年で一番憂鬱な一日であった。

　待ってるだけではダメだ。そう思い、自ら憧れの少女のためチョコを作った今年もやはり憂鬱な一日になりそうな朝だった。登校してくるまでの気合はすっかり萎えていた。

　少しでも周りに不審に思われないよう、いつもと同じように遅刻寸前に教室入りした。それが間違いだったのかもしれない。
　
　少年が廊下を歩いてるとき、教室から憧れの少女の声が聞こえた。
「今年はみんなの分作ったから、よかったらどうぞ」

　どうやら、クラスメイトにチョコを配ってるようだった。少年も少し期待した。

　少年が教室に入ると、憧れの少女と目が合った。しかし、すぐに目線をそらされた。ほとんどのクラスメイトの手には、小さな赤い箱があった。少年の手にもその箱が渡されることはなかった。

　少女は、少年と目を合わせないまま席につき、そのまま授業の用意を始めてしまった。

　少年はショックを受けた。自分だけチョコを貰えないなんて、嫌われてるのだろうか、と落ち込んだ。

　
　あれこれと悩んだまま時間は過ぎた。少年はなんども少女の方を見ていたが、少女は故意に視線が合わないようにしてるようだった。

　
　そして、結局少年はチョコを渡せないまま放課後になってしまった。もう渡す気はなくなっていた。半日考えた結果、少女は自分を嫌っているという結論に達したからであった。憂鬱な気持ちのまま帰路についた。

　
　少年は歩いてるうちに後悔の念が沸いた。ダメ元でも渡すだけ渡せばよかった。どうせ受け取って貰えないなら、気持ちだけ伝えればよかったのではないか。いろんな考えが少年の頭を巡った。

　そんなとき、少年の目に憧れの少女の姿が映った。少女は帰る方向が違うはずだった。なぜここにるかはわからなかったが、少年はチャンスだと思った。
　チョコを渡せるように少女に近づいた。そして、話しかけた。

「……さん、あのちょっといい？」
　少年の声は掠れてうまく喋れなかった。しかし、少女は振り向いてくれた。


沈黙は数秒、少年は意を決して、声を出した。
「あの、これ良かったら受け取ってください」
「良かったら、これどうぞ」
　少年の声に少女の声がかぶった。少女の手には、クラスメイトに渡していたものより一回り大きい箱が握られていた。

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執筆日：2011-02-10
公開日：2011-02-13
加筆修正日：2011-02-13
執筆者：元伊六 ]]>
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		<title>ssn-01-2　クリスマス</title>

		<description>　閑静な住宅街にある喫茶店。美しいイル…</description>
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			<![CDATA[ 　閑静な住宅街にある喫茶店。美しいイルミネーションで彩られていた。店内の一角に置かれたもみの木にはこの日を祝うための飾り付けがされていた。
　限定パフェをつつく女子高生、本日のご馳走の話をする主婦、欲しいプレゼントについて話す親子、いろんな人がいた。店内は幸せなムードに満ちていた。

　そんな雰囲気に馴染みきれない男が一人。中年と呼ぶには少し早いが、若さは感じられない。精悍な顔立ち、シャープなメガネ、眉間に寄った皺、皺ひとつない背広、きっちりと締められたネクタイが近づきがたい雰囲気を醸し出していた。しかし、それ以上にこの日の彼は寂びそうな背中をしていた。机に置かれたかわいく包装された箱は彼には似つかわしくなかった。

　はぁあ、と深いため息をした。ほとんど口をつけていないコーヒカップは既に熱を失っていた。男はここに来てからため息ばかりついていた。視線は箱にそそがれていた。たまにケータイ電話を取り出してぼーっと見ていたが、それ以外では箱をずっと見ていた。なにかを迷っているようだった。

「プレゼントですか？」
　男の様子を伺っていた店員がやってきて、男に尋ねた。

「一応」
　男は短く答えた。自信のない震える声だった。

「娘さんにあげるんですか？」
「そのつもりだったが……」
　店員の言葉に男は少し迷うそぶりを見せた。

「私のただのエゴなのかも知れない」
「今日は、サンタさんが子どもたちにプレゼントを配る日です。実はお客様あてのプレゼントを預かっているんです」
　店員は微笑みながら一通の封筒を男に渡した。

「私に……？」
　男は怪訝そうな顔つきで封筒をみた。とても綺麗な字で書かれた宛名は確かに男の名前だった。その字には見覚えがあった。封筒の裏に書かれた差出人の名前は、男が過去に永遠を誓い合った女性のものだった。

「開けてみてください」
　勇気付けるような店員の言葉に促され、男は封筒を開けた。中に一枚の手紙があった。そこには、


『サンタさんへ。
　ぷれぜんとは　いりません
　そのかわり　ぱぱにあわせてください
　しおりより』

　そう書かれていた。その字は封筒の字とは違って、幼い子どものものであった。
　

　しばらく、手紙をじっと見ていた男は携帯電話を取り出した。その表情に迷いはなかった。


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執筆日：2010-12-25
公開日：2010-12-26
加筆修正日：2010-12-26
執筆者：元伊六 ]]>
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		<title>ssn-14　泥棒のクリスマス</title>

		<description>　赤い服に赤い帽子を被って白いひげをつ…</description>
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			<![CDATA[ 　赤い服に赤い帽子を被って白いひげをつけて、大きな白い袋を背負った男性が歩いてた。とても目立つ格好でしたが、夜道にたまにすれ違う人は疑問に思わなかった。なぜなら、今日はクリスマスと呼ばれる日だから。

　子どもにプレゼントを渡すのに本格的な格好をしたお父さんか、それとも飲み会での余興の服装のまま帰宅してるのか、はたまたサンタ代行なんてお仕事ができたのか、すれ違う人たちはそう考えた。

　しかし、男がその格好をしてる理由はそのいずれでもなかった。彼が背負った袋にはたしかにおもちゃやゲームが入っていた。が、それは子どもたちに配るためではない。男の言葉を借りるなら戦利品だった。今夜一晩かけて歩き回って手に入れた品だった。

　男はいわゆる泥棒だった、少々特殊な。子ども部屋にだけ侵入し、おもちゃやゲームだけ盗んでいた。ほかの金目のものや現金や手帳には一切手をつけてなかった。最近は子どものおもちゃも高く売り払うことができる。なかには発売直後に売り切れ、ネットオークションで原価の十倍ほどで取引されているゲームなどもあった。

　この格好をしていればこの日に限り、簡単に子ども部屋に侵入することができた。家の人に見付からないよう、子ども部屋から侵入して子ども部屋から出て行く。出入りするところを見られても手の込んだサンタ役だと思われるだけである。基本的にもの音を立てないが、それでも子どもが目を覚ましても、驚かれても怪しまれはしなかった。大人にもの音を聞かれても、興奮して眠れない子どもがバタバタしてると思われるだけである。

「次で最後の一軒にするか」
　すでに数十件回っていた。ターゲットの家は裏ルートから入手した小学校の名簿を参考にしていた。これだけ盗れば、年を越すには十分である。

　
　ボロいアパート。その一回にある小さな部屋。そこを最後のターゲットに選んだのは気まぐれだった。すでにめぼしい家は周りきっていた。事前調査ではここは母子家庭で、その母親は夜の仕事に出かけている。金の匂いがしなかったから、それ以上のことは調べていなかった。

　侵入はたしかに簡単だった。ドアは古く、ピッキング対策が施されていなかった。狭い家の中で子ども部屋を捜すのも簡単だった。事前の調べなしでここまで簡単に侵入できることも珍しい。

　子ども部屋は予想通りにさびしいものだった。必要最低限のものしかおかれていなかった。片付いているというより、散らかすものがないといったほうがいいだろう。子どもが被る布団は薄いものが一枚だけだった。当然のように暖房器具は置かれていない。

「寒くないのか？風邪引くんじゃないのか？」
　男はついつい寝ている子どもを心配してしまった。

　その声に子どもは目を覚ました。
「だ、誰？」
　子どもの上げた大きな声に男は驚いた。それでも比較的落ち着いて、対処する。

「サンタクロースだよ、坊や」
「嘘だ、うちにサンタさんは来ないんだよ」
　しかし、子どもは信用しなかった。それもそのはずで、この子は一度もサンタからのプレゼントをもらったことがなかった。

「うちにはお金ないから、早く帰ってよ」
　泥棒と決め付け、それでも怯むことなく子どもは畳み掛ける。

「ほんとにサンタさんだって」
　それでも男は取り繕うとする。

「ほんとに？　じゃ証拠みせて」
「証拠？」
　子どもの言葉に男はつい聞き返した。

「サンタなら僕にプレゼントをくれるために来たんだよね？」
「も、もちろんさ」
「じゃ、はやくちょーだい」
　そういわれて男は困った。なぜなら男には子どもの欲するプレゼントがわからなかったからだ。

「なにが欲しいんだ？」
「サンタなら知ってるはずでしょ？やっぱり偽者なんだね」
　男は背負った袋のことを考える。おもちゃならたくさんある。どれを渡そうかと悩んでいた。

「べ、別に無理しなくていいよ。どうせ僕にプレゼントくれる人なんていないんだから」
　突然、子どもは泣き出した。男はあわてた。

「そ、そんなことないおじさんは君にプレゼントを持ってきたんだから」
「嘘だぁ、そんなはずない」
　男は子どもを必死にあやしていた。しかし、なんでこんなことしてるんだろうと疑問に思いながら。

「ほら、これをあげよう」
　そういって、いま人気のおもちゃをとりだした。

　それを見て子どもは笑顔になった。
　

　その笑顔を見ながら男は思った。いいことするのもたまには悪くないな、と。

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執筆日：2010-12-25
公開日：2010-12-26
加筆修正日：2010-12-26
執筆者：元伊六 ]]>
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		<title>ssn-13　少女とサンタ</title>

		<description>　とある地方のとある住宅地。ベッドタウ…</description>
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			<![CDATA[ 　とある地方のとある住宅地。ベッドタウンと呼ばれるその町は、たくさんの明かりに満ちていた。ふわふわとした明かりは人々の浮かれた気持ちの具現化か。どの家も電飾で飾られていた。

　そんな眩しさで、女の子は眠れないでいた。いつもならもう寝ている時間だった。寝れないのは眩しさのせいか、それとも……。

　女の子の家は、ほかの家と同じように電飾で飾り付けをし、ほかの家と同じように簡単なパーティーをやり、ほかの家と同じようにこの日を祝った。。そして、明日の朝にはほかの子どもたちと同じようにサンタクロースからのプレゼントが届く。

　浮かれた光にあてられて女の子の心もまた浮かれていた。いや、明日届くプレゼントのことを考えると浮かれるのは仕方ないことか。ずっと欲しかった人形が届く予定である。人気の熊の人形である。女の子らしいリボンを左耳につけ、ピンクの色をした愛くるしいくまさんである。目覚めたら彼女が枕元にいると思うと女の子はわくわくした。

　彼女が来たらどうしようかなぁ。ほかの子――女の子の持ってるたくさんのお人形に紹介してあげようかな。その前に二人で思う存分遊ぼうかな。あ、そうだ絵本を読んであげようかな――わたしがお母さんにされてるように。それとも、向かいの家のあの子に自慢しようかな。明日が楽しみだなぁ。と、女の子はそんなことを一生懸命考えていた。どんどん、眼は冴えていった。

　そうこうしてる内に、ひとつ、またひとつと浮かれた明かりが消えていった。夜が深まり、闇の時間が到来しようとしていた。大人も布団に入るような時間になって、それでも女の子はまだ眠れなかっった。

　消えていく明かりを眺め、女の子は思った。そろそろサンタさんの来る時間だ。

「サンタさんってどんな人なのかな？」

　絵本などで見るサンタクロースはいつも赤い服に赤い帽子、それから真っ白なひげを生やしたふくよかなおじさんである。でも、女の子は実際にサンタクロースを見たことがある人にあったことがなかった。

　誰も見たことないのなら、もしかしたら全然違う格好をしてるかもしれない。と、女の子は考えた。そんな特徴的な格好なら、誰にも見られたことがないなんておかしい。きっと、もっと目立たない服装をしてるんだ。夜の闇に紛れる真っ黒な服かもしれない。真っ黒なおひげかもしれない。よく考えるとトナカイも見たことがない。

「こっそりサンタさん見てても怒られないよね」

　女の子はよからぬことを考した。寝たふりをしてこっそりとサンタクロースを見てみようと思った。

　そして布団を深くかぶった。ほんの少し、外が見えるように隙間を作って。眼は慣れていて、暗闇の中でもよく見えていた。

　女の子は布団の中でサンタクロースが来たらどうするかを考え出した。このまま隠れてこっそり見るだけにするか。でもそれはもったいない。サンタクロースは年に一回しかこない。このチャンスを逃せば次に見ることは出来ないかもしれない。サインを貰おうか。それとも一緒に写真を撮ろうか。想像は膨らんでいく。

　時間は静かに流れる。そうしてるうちに睡魔が襲ってきた。女の子はどんどん重くなるまぶたに抵抗しようとする。意識が薄れていく。ぼやんりとした視界は最後に赤いなにかを捉えた気がした。

　睡魔に抗うことは出来ずに女の子はそのまま眠りに落ちた。
　
　朝日に照らされた女の子の寝顔の横には人形と手紙がおかれていた。

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執筆日：2010-12-24
公開日：2010-12-26
加筆修正日：2010-12-26
執筆者：元伊六 ]]>
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		<dc:date>2010-12-26T00:07:28+09:00</dc:date>
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		<title>ssn-12　ピンクの手袋</title>

		<description>　そこはあたり一面真っ白な世界でした。…</description>
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			<![CDATA[ 　そこはあたり一面真っ白な世界でした。見渡すがきりの白。世界のすべてが白に覆われていた。それでもまだ満足しない白は容赦なく空から舞い降りている。

　そんな世界に少年がひとりいました。少年は世界と同じような真っ白の肌をしていました。世界と同じような真っ白なコートを羽織、真っ白のズボンを履き、真っ白の長靴を履いていまして。一見すると世界と同化しそうな真っ白でした。首に巻いた青いマフラーと、青い帽子、、それから左手につけた青い手袋だけが、世界から浮いているようでした。

　その少年はキョロキョロと首と目を忙しなく動かしながら、同じ場所をくるくる歩き回っていました。

「困ったなぁ、この辺に落ちてると思うんだけど」

　透き通るように白く無機質な声でつぶやきました。
　しばらく少年はその動作を続けました。まるで壊れたおもちゃのように、それしかやることを知らないかのように。

　そうして、しばらく経ったころ、そこを女性が通りかかりました。彼女は、色鮮やかでした。一面白の世界が彼女の周りだけ色を持っているようでした。艶やかな黒い髪、見るものを飲み込むような黒い双眸。茶色いコートに青いジーンズ、青いニット帽、青と赤のマフラーをつけていました。それから、両手にはめたピンクの手袋。

「ねー君、どうかしたの？」
　色鮮やかな女性が色鮮やかな声で少年に声をかけました。
　急に話し掛けられた少年は驚きました。その後、どうしたらいいかわからなくなりました。

「何か落としちゃったの？　あ、手袋ね。寒いでしょ？　大丈夫？」
　少年が黙っていると、女性が心配そうな声を出しました。
　少年は確かに手袋を探していました。でも、少年には寒いということがどういうことかわかりませんでした。女性の言ってることがわかりませんでした。

「はい、手袋をこの辺に落としました。ところで寒いとはなんですか？」
　少年は、やはり無機質で白い声でそう言いました。
　女性は自分の手袋を外して少年の右手を覆うように握りました。

「やっぱり、冷たくなってるわ、大変」


　女性に手を握られた少年は、その手からなにかが自分に染みるように入っていくのを感じました。それは胸いっぱいに広がりました。少年には、それがなにかわからなかったけど、うれしくなりました。

　ふと、口元が緩んだ少年を見て、女性は言いました。

「私の手袋をあげるわ」

「でも、それではあなたが”寒い”のではありませんか？」

　少年のその言葉に女性は首を振りました。

「私は家が近いから大丈夫よ」

　そういって女性は微笑みました。そして、自分のピンクの手袋を少年に渡しました。

  
　白い白い世界にひとつの雪だるまがあった。朝日を浴びたその雪だるまはまるで微笑んでいるようにまぶしい表情をしていました。青いバケツ、青いマフラーつけていました。左手には青い手袋、そして右手にはピンクの手袋をはめていました。



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執筆日：2010-12-23
公開日：2010-12-26
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