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・更新未定です
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 薄暗い室内。明かりはモニターの発する光だけだった。そこには少年がただ一人。PCと睨めっこしていた。左はキーボードの上、右手はキーボードとマウスの間をせわしなく行き来していた。しかし、キーボードは数分に一回、検索ワードを打ち込むためにしか動いてなかった。こういうときは筆が走らないというのだろうか、それともキーボードが走らないというべきか。

発端は部長の一言だった。
「今回のお題は『きなこの存在について』に決まりました」
 部長がいつもと同じように軽い様子で言ったその言葉が少年を苦しめていた。『きなこの存在について』ってなんだよと、悪態をなんど付いたことか。

 定期的に開催されるお題小説は文芸部員全員参加が義務つけられている。文章量は問わず、小説の体をなすものならどんなものでもいい。割とアバウトな規制なのだが、期限内に小説を書き上げられなかった者には、厳しい罰ゲームが課せられる。期限は、明日の放課後までである。徹夜をすれば掌編小説くらいは十分に書ける。アイデアさえあれば。
 すでに数時間、いやお題が出されてからいままで数十時間以上、下手すれば三桁に及ぶ時間をきなこについて考えてすごした。なんどなくきなこについて検索もした。図書館で調べもした。しかし、まったくアイデアは浮かんで来なかった。収穫は、きなこは大豆から作られるとか、意外とミネラルが豊富などのきなこについての知識だけであった。

 PCの画面をいくら睨んでもアイデアは少年に降ってこない。これ以上きなこについての知識を増やしても仕方ないと、少年は検索するのをやめた。その後、なんとなしにキーを打つが、しっくりくる文章は打てない。物語の筋が浮かばないと文章の書けないタイプだった。幾度となしに書いては消される文字の羅列。そろそろ諦めようとしたとき、ケータイの着信音が暗い部屋に鳴り響いた。

『このお題無理だよな? このお題で小説を書けるやついないだろ、いくらなんでも』
 同じ部の友達からのメールだった。それを見た少年に、ひとつのアイデアが浮かんだ。

「きなこの存在について』という無理なお題を与えられたアマチュア小説家が主人公……」
 浮かんだアイデアを呟く少年。薄暗い部屋でブツブツとしゃべる姿はうす気味悪い。
「苦悩して、苦労して、苦悶しながら、それでも小説を書き上げる」
 小説を書く姿を小説で描くというのは、少年にとっては初めてだった。少し抵抗を覚えたが、時間がないと、自分を納得させた。

「そして、書きあげた小説を翌朝、推敲した。するとその完成した作品は、残念ながら小説とは呼びがたかった。つまり、小説を書けなかったと、落ちとしてはちょっと弱いかな。苦労して書くところを詰めて、盛り上げれば、なんとかいけるな」
 うまく落とせる自信はなかったが、時間もない。書くしかない。追い詰められた少年は、深夜のテンションで見切り発車で書き始めた。


 そして、一時間で書き上げた。
 

 昼休み、提出前に一度読んでおこうと、目を通して少年は絶句した。そして少年は、結局罰ゲームを受けた。
その完成した作品は、残念ながら小説とは呼び難い出来だった。
 ただの駄文だった。




執筆日:2010-9-12
公開日:2010-11-14
加筆修正日:2010-11-14
執筆者:元伊六
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