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・更新未定です
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 ここで過ごす夏の夜はこれで最後だろう。

正直言うと、土臭いこの村はあまり好きではなかった。いや、嫌いだった。お袋の生まれ育った村ということで、毎年夏になるとこの村で過ごすのが恒例となっていた。都会よりも空気がよく、涼しくて過ごしやすいし、海も近いということもあるが、何よりもお袋の里帰りに付き合わされる形でこの村に来ていた。ゲーセンもファーストフードもなく、遊び友達のいないこんな田舎にまで足を運びたくなかった。しかし、約一ヶ月もの間、一人で都会に残る事もできなかった。結局は付いてくるしかなかった。しかし、それも今年までだ。。

最後だと思うと嫌いだったとはいえ、感慨深いものがある。空一面に広がる星はこんなに美しかったのか。いままで、ちゃんと見たことなかったな。木々が風に揺れて音を立てる。虫の鳴き声も気持ちいい。打ち寄せる波の音とうまく調和していた。手に持った線香花火も気のせいかいつもより鮮やかだった。月夜に照らされると、いままで野暮ったく思っていた従姉妹の顔も綺麗に見えた。

「ねぇ、にいやん、明日帰るの?」
 横顔を眺めていると不意に彼女が話しかけてきた。その目は、手に持った線香花火を見ていて、幸い視線には気づいていないようだった。
「あぁ、そうだな。明日の朝一の電車で帰る予定だ」
 とはいっても、電車を何度か乗り換えるため、家に着くのは日が落ちてからになる。

「もう少し、遅くできないの?」
 明日の出発時刻のことか、滞在期間のことかどっちかわからなかったが、どっちにしろ答えは変わらない。
「無理。もうすぐ学校だから」
「そっか」

 それっきり彼女は黙った。俺も特にしゃべることはないのでしばし沈黙が続いた。決して苦痛ではない無言が流れた。夜の闇は静寂に包まれることはなかった。隣から聞こえるドクンッドクンッという音があたりを支配していた。俺の心臓もこんなに高鳴ってるのかな。
たぶんそんなことない。俺は落ち着いていたる。ここの空気が、匂いが、俺を落ち着かせていた。

「ねぇ」
 線香花火が最後の1本になったとき、彼女が消え入りそうな声を出した。それは心音に完全に負けていた。
「うん、なんだ?」
 知らず声が上ずってしまう。なんとなく、返ってくる答えが予想できるためか。
「この花火、何秒くらいもつと思う?」
 なんだ、そんなことか。予想、いや期待していた答えではなかった。

「20秒くらいじゃない」
「じゃ、賭けしない?」
「いや、」
「20秒以上燃えれば私の勝ちでいいよね、にいやん」
 否定する前に言い切られた。こうなると梃子でも動かない性格だった。承諾するまで何時間でも粘るだろう。仕方ない。

「わかった。で、何を賭けるんだ?」
「私が勝ったら来年も来て」
 心臓が跳ねた。それは、さっき予想していた答えのひとつだった。あぁやっぱりこうなるか。

「やっぱりわかってたんだ。俺がもう来ないつもりなの」
「うん、ばればれだったよ」
「わかった、その賭け乗った」
 その声は、自分でも意外なほど楽しそうだった。

最後の線香花火は静かに燃え出した。二人が見守る中、その儚い炎はいつまでも燃え尽きそうになかった。




執筆日:2010-6-30
公開日:2010-10-23
加筆修正日:2010-10-23
執筆者:元伊六
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