about?

・更新未定です
・SSNのSSは二次創作のことではなく、ショートストーリーのことです
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 閑静な住宅街にある喫茶店。季節に合わせて笹飾りが飾られたその店内には数人の客がいた。学校帰りの高校生、午後のティータイムを気取ってるプチセレブ、井戸端会議をする主婦などそれなりの客入りであった。テスト、嫌いな先生、流行のファッション、高級ブランド、晩御飯の献立、娘の進路など多様な話題が店内に満ちていてた。

雑多な雰囲気に馴染みきれない男が一人。中年と呼ぶには少し早いが、若さは感じられない。精悍な顔立ち、シャープなメガネ、眉間に寄った皺、皺ひとつない背広、きっちりと締められたネクタイが近づきがたい雰囲気を醸し出していた。机に置いてあるプリクラが貼られた携帯電話は、男には似つかわしくない。

男は三杯目のコーヒーを飲みながら、ボーっと入り口を見つめている。たまに携帯に視線を落としたり時計を確認したりしている。

「待ち合わせですか?」
 手の空いた店員が話し掛けた。
「近いが違う」
 男は店員を一瞥し、視線を扉に戻す。
「というと?」
「私が勝手に待っているだけで、約束はしていない」」
「今日は彦星と織姫が一年に一度会う日です。お客様も待ち人に会えるといいですね」
 そう言って店員は優しく微笑んだ。
「そうだ、お客様も短冊を書きませんか? ちょっと、待っててください」」


 店の奥から戻ってきた店員の手には色とりどりの紙とペンがあった。
「はい、これ。好きな色を選んでください」
「たまにはこういうのも悪くないかな」
 男は黄色い短冊とペンを受け取る。

 一瞬、携帯電話に目をやり、すぐに書いた。
「書くの早いですね。皆さん、結構悩んでから書くのに」
「ずっとこのことばっかり考えているので」
 少し照れた男の手元には、『詩織が元気に育つように』と書いてあった。。
「娘さんですか?」
「ああ、今日が誕生日なんだ」
「娘さん、来るといいですね」
「え?」
 どうしてわかったんだ、という顔をする男。
 店員の視線を辿って納得した。彼女は携帯に貼られた娘と一緒にとったプリクラを見ていた。
「そうだな。いや、私は娘と会うべきではないのかも知れない」
 寂しそうに窓の外をみる。
「そうですか。短冊を飾って来てください」
 店員は、優しい微笑を浮かべたまま、笹飾りのほうを見る。
「ああ、わかった」
 男は立ち上がった。


 笹飾りから戻ってくる男の足取りは軽かった。思いなしか男の表情は柔らかくなっていた。
「そろそろ帰ります」
 そういって伝票と鞄を手に取る。
「もういいんですか?」
「ええ、もう満足しました」
 その言葉は、とてもさわやかで、男の顔には満面の笑顔が張り付いていた。


 笹飾りには、黄色い短冊と寄り添うように飾られた青い短冊があった。
 そこには『パパともういちど、あえますように しおり』と書かれていた。




執筆日:2010-06-26
公開日:2010-07-05
加筆修正日:2010-10-19
執筆者:元伊六
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